みなさまは「震々（ぶるぶる）」をご存知でしょうか？妖怪震々の小説風エンターテインメントをお楽しみください。
エアコンクリーニングを依頼
セミの声が響き渡る暑い夏の日、待望のエアコンクリーニングがやってきました。希代おさむは「もっと早く依頼していればよかった」と思わず口にした。
30度を超える今日は、エアコンクリーニングも大変だろうなと思っていると、「ステラ清掃化学の気田です」と声が聞こえてきた。挨拶を交わし、さっそくエアコンクリーニングが始まった。
エアコン洗浄の際、想像以上に黒い汚水が出てきて、「これを使っていたのか」と健康について不安になると同時に恥ずかしくなった。しかし、「キレイにするのが私の仕事です」と言われ、気が楽になった。
「ありがとうございました」と感謝を伝え、洗浄後の小一時間の乾燥運転に入っていた。「それでも随分と涼しいな」と希代はエアコンクリーニングに満足していた。
希代は少しウトウトしていたのだろうか。ピンポンと呼び鈴の音がけたたましく感じられ、飛び起きた。時計を見ると、友人の佐藤が訪れる予定時刻だった。「どうぞ入って」と友人を迎え入れた。
希代は「なんか気づかないかい？」と佐藤に尋ねた。「なんだろう」と佐藤は特に何も感じていない様子だった。希代が「実はエアコンクリーニングをしたんだよ」と言うと、佐藤は「そういえばカビのニオイがしないね」と答えた。
希代は「ちょっと台所に行って、つまむものでも準備してくるわ」と言って奥に消えた。「お待たせ」とつまみを持って戻ってくると、佐藤の顔は青ざめ、ぶるぶると震えていた。
「佐藤、どうしたんだ？大丈夫か？」「さっきから震えが止まらないんだよ」と佐藤は答えた。続けて「少し寒くないかい？」と言った。エアコンの設定温度は28度だった。
一度エアコンをオフにすると、佐藤はいつもの顔色を取り戻した。「心配したわ」と希代は言った。佐藤は「お前が台所に行ってから、ちょっとウトウトしてね。夢を見たんだよ。女の幽霊が出てきて息を吹きかけてきたんだ。そのときに台所の方から音がしたような気がして目を覚ますと、ぶるぶる震えていたんだよ」と話した。
希代は妖怪図鑑を取り出して「これだ」と叫んだ。妖怪「震々」のページだった。佐藤は「たしかにこんな感じだった」と言った。
ふと部屋の暑さに気付いた希代は冷房のスイッチを入れた。すると、佐藤が震えていた場所に冷風が直撃する形になっていた。
「エアコンクリーニングをしたばかりの冷房が直撃していたんだよ」と希代は言った。「よくあるあれかな？夢でてんぷらを食べたときには、実際にてんぷらが出てきた。揚げた音が夢につながったと思うね」
「なるほど、調子のよくなったエアコンの風が直撃して妖怪『震々』を夢に現したのかな」とりあえずそういうことにして、つまみを楽しんだ。
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